「原因がわからない」 

加藤 真理子 D.C.  Dr. Mariko Kato D.C.      

アイオワ州のPalmer College of Chiropractic卒業、米国国家資格取得、ジョージア州とミシガン州の州資格取得。

 

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先日初診に来られた患者さんが言いました。「こんなにあちこち痛くて痺れて筋肉が弱ってきているのに原因がわからない。」私が「ここに来院するまでにどのような検査をしましたか?」と聞くと「2004年にMRIを撮りました。」と言うので「結果はどうでしたか?」と聞いたところ「アーノルド・キアリ奇形と脊髄空洞症と言われました。」この時点で原因は100%明確なので「原因は先天性による小脳のヘルニアと言われたんですよね?当院では既に2人のアーノルド・キアリ奇形の患者さんがアジャストで症状が軽減されていますよ。」とお伝えすると「え?手術しなくても治るんですか?」と質問されました。

 

この患者さんの場合「原因がわからない」のではなく「解決方法がわからない」が正しいと思います。また、原因がわかっていたとしても何の対処もしなければあなたの脳や神経は変化することができないので症状が改善することはありません。「手術しなくても治るんですか?」への答えですが、それはやってみないとわかりません。冒頭の2人の患者さんのうち1人は子供の時に手術をしても症状は改善せず当院に来院した時には既に高校生でした。もう1人の患者さんは手術はしていませんが初診時は20代前半でした。

 

アジャストでアーノルド・キアリ奇形(小脳のヘルニア)そのものが”治る”(この場合、飛び出ている小脳が元の位置に戻る、とでも表現すればいいのでしょうか)ことはないです。なぜなら頭蓋骨の形の奇形をアジャストによって(骨の形を)変える事は出来ないからです。ですがアジャストをすることで2人の神経がそのヘルニアの状態であっても痛みを出さないでいられるようアダプト(適応)することはできました。処方された痛み止めを使わないでも大丈夫なまでに回復しました。この2人のように10代20代でアジャストを始めるのと、この初診の患者さんのように40代でアジャストを始めることの違いは経過した時間の長さです。どのくらい問題を放置していたかがどのくらいまで回復させることができるか、の答えです。

 

長い原因探しの旅の末やっと答え(病名)を見つけても手術は時期尚早と経過観察という名の放置(痛み止めの処方)をしている間にあなたの神経はどんどんどんどん回復する可能性を減らしています。私は投薬には反対していません。重度な場合は必要です。ですが薬は根本的な解決方法ではありません。最期まで自分の身体で人生を全うできたら、実はたくさんのお金を節約でき、それ以上に大切な時間を、痛みで苦痛を感じる時間を、笑顔でストレスが少なく生産性の高い時間にできるのです。単純な事実なのですが、分かっている方はとても少数派です。

 

予防医学を実現できるヘルスケアプロフェッショナルという存在は限られていると感じています。保険診療の元に行われる診断・治療の世界では、病名がつけばその病気の治療を行うことができます。心臓が悪かったら心臓の専門医、腎臓が悪かったら腎臓の専門医、肺が悪かったら肺の専門医が治療にあたります。では頭痛の方は?慢性の腰痛の方は?慢性の肩こりの方は一体どのヘルスケアプロフェッショナルに診てもらえばよいのでしょうか?病名がつかなければ治療を開始することができないため、不調がある現時点で行えることといえば、痛み止めの処方、それが効かなければ少し強い痛み止めの処方、それが効かなけれがフィジカルセラピーの紹介、それが効かなければMRIまた血液検査等の実施、そして運よく病名がつけられれば治療の開始(この時点になると手術という提案が多くなる)といった流れが一般的です。病名がつくまで(MRIや血液検査などで異常が検出されるまで)待っているその何年または何十年の間に、あなたの身体はどんどん回復する機会を逃していってしまっているのです。更に付け加えると、全ての病気が早期から痛みを発生するわけではありません。気が付いた時には手遅れであることが多いのはそのためです。

 

身体のあちこちに不調が現れ始め、それが身体からの危険信号だと気づきようやく健康への対策を始める。この対策のスタートはもうすでに“治療”のことが多いです。しかし、もし、危険信号を感じる前に不調の“予防”ができていたら“治療”は必要なくなるかもしれません。現代医療が“治療”から“予防”に舵を切ることができたら、副作用のある薬の使用や手術の必要性を減らせるかもしれません。

 

当院の最大の目的は”その症状を作った悪い習慣を取り除くことができれば、患者さんご自身で病気やケガのリスクを軽減できる身体を作ることが出来る”ということを体感して頂くことにあります。本来身体は回復する機能(恒常性)を持ち合わせているのですが、何かがその恒常性を阻害しているから症状が回復できないでいるのです。カイロプラクターの仕事とは”腰痛や肩こりを治します”ではなく、なぜ腰痛や肩こりが治らない状態になってしまっているのか?その恒常性を阻害しているものを検査を通して探し取り除くことで、患者さんの神経が正常な機能を取り戻し恒常性が回復することで、その結果患者さんの症状は改善していくのです。薬は起きている症状を抑えるだけの対症療法で根本的な解決にはなりません。身体を本当の意味で治すことが出来るのは患者さんご自身だけです。これが身体を根本から改善する、ということです。あなたの現在のQqL(Quality of Life)はあなたが今までどういった選択をしてきたかの結果です。あなたのお子さんの将来のQqLはあなたが今お子さんのために何を選択されるかにかかっているのです。私は目先の数か月、数年ではなく、患者さんの長い人生を見据えてどういった人生を送って頂きたいかを考えて日々アジャストをしています。